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小泉政権から続く「小さな政府」論に基づく「官から民へ」の流れは、依然として弱まることを知りません。
イギリスで行財政改革の一手法として生まれたPFI(民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設等の建設、維持管理、運営等を行う)は、1999年の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」いわゆるPFI法の施行により日本でも導入されました。小泉政権後急増し2007年末において、全国で実施件数225、計画されているものまで含めると295件。愛知県でも15件実施、計画を含め17件となっています。
2003年の地方自治法改正により、「多様化する住民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るとともに、経費の節減等を図ること」を目的に、指定管理者制度が導入されました。従来、教育、文化、スポーツ、福祉施設などの公の施設のうち相当多数の施設が、外郭団体などに管理委託されていました。こうした施設は、2006年9月1日までに、自治体の直営か指定管理者制度に移行するかを迫られたわけですが、ほとんどが指定管理者制度に移行しています。移行期限直後の2006年9月2日現在での総務省の調査によりますと、全国で61,565施設が指定管理者制度を導入。そのうち、約2割に当たる11,252施設で民間企業等が指定管理者となっています。
2006年5月に「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」が成立、7月から施行されました。いわゆる「市場化テスト法」です。これにより、官民競争入札や民間競争入札が導入され、官の世界でも競争による公共サービス改革が進められることになりました。すでに、東京都、和歌山県、岡山県などで官民競争入札により、北海道、大阪府などで民間競争入札により、市場化テストが行われています。愛知県でも、自治研修所職員研修業務と旅券センター旅券申請窓口で、モデル事業として市場化テストが行われ、研修所は県が、旅券センターは株式会社ジェイコム(所在地 大阪市北区)が業務実施者となっています。来年度は、さらに「公共職業訓練校の業務」を予定しています。
昨年12月、総務省は「公立病院改革ガイドライン」を公表、各自治体に通知しました。その中で、「公立病院の役割は、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供すること」であり、「地域において真に必要な公立病院の持続可能な経営を目指し経営を効率化」することが必要だとし、地方自治体に対し、2008年度内に「公立病院改革プラン」を策定することを求めています。この「改革プラン」では、(1)一般会計からの所定の繰り出し後「経常黒字」が達成されることを目途とし、経営収支比率・職員給与比率・病床利用率などに目標数値を設定し民間病院なみの効率性を達成するよう経営を効率化すること、(2)地域医療計画との整合を確保、二次医療圏等の単位での経営主体の統合を推進すること、(3)人事・予算等の実質権限と結果への評価・責任を経営責任者に一本化し、経営形態として、地方公営企業法全部適用、地方独立行政法人化、指定管理者制度、民間譲渡などを選択、診療所化や老健施設、高齢者住宅事業等への転換なども含め、幅広く見直すこととしています。
政府は、自治体の技能労務職に対する圧力も強めています。昨年6月、安倍内閣時の骨太方針2007の中で「公務員給与について、特に民間事業者と比べて水準が高いとの指摘のある地方の技能労務職員をはじめとして、地域の民間給与をよりいっそう反映させること」としました。また、総務省は7月3日に「地方公共団体の技能労務職員等の平均給与月額等について-民間部門との比較-」を公表し、その場で当時の菅総務大臣は「ボーナスを含めた年収ベースの試算を行うと2倍以上の開きがある。そういう職種もでてきております。……今回公表された民間給与データを参考にしながらその見直しに向けて真摯な取り組みをしていただきたいと思っております」と発言しました。7月6日には、公務員部長・大臣官房審議官(公営企業担当)通知「技能労務職員等の給与等の総合的な点検の実施について」を出し、各自治体に対して、(1)民間の同一・類似職種との均衡にいっそう留意した給与制度・運用の適正化、(2)給与情報等公表システムの充実等情報開示の徹底、(3)給与等の総合的な点検と取り組む方針の策定・公表を求めています。ここで民間給与データとして公表されたのは、賃金センサスというものです。これと地方公務員の給与との比較には、第一に企業規模・事業所規模が人事院の調査対象と異なっている、第二に雇用形態が異なっている、第三に職務・仕事の内容が異なっている、第四に平均経験年数が異なっている、という問題の多いもので、総務省もそのことは認めているのですが、それにもかかわらず比較して公務員の給与が高いということを、強く印象付けようとしています。
総務省の意図は、公務員給与切り下げに加え、技能労務職職員を公務の職場から一掃しようというところにあることが、その後の自治体のヒアリングの中で明らかになってきています。
こうした「官から民」への流れの中、各所でひずみが現れています。
仙台市のPFI第一号である「スポパーク松森」では、2005年8月の地震により、屋内プールのつり天井が落下し、プール室内の利用者35人が負傷しました。原因は施設が要求する水準を満たした工事が行われていなかったという事業者の契約不履行と施設管理者の完工確認が不十分であったことがあげられています。滋賀県の近江八幡市立総合医療センターや高知医療センターでは、PFI事業で建設した病院が、当初の事業計画に反し、多大な赤字を生んでいます。
指定管理者制度では、施設の設置目的より経費削減に重点が置かれ、過度の人員削減やアルバイト雇用が進んでいます。出雲市のプールでの死亡事故や、指定管理ではなく管理運営委託ではありますが、ふじみ野市のプールでの死亡事故は、監視体制の不備や管理不備により発生しました。経営破たんなどによる撤退や廃止も相次いでいます。
市場化テストにおいて、法令の特例を設けて設定した戸籍謄本等の交付の請求の受付などの特定公共サービスは、今のところ実施している自治体はありません。人の配置や事務の流れなど、これらの事務だけを切り分けることが非効率であることは、実務を担当する立場からは自明のことです。すでにこうした職場に多数の臨時・非常勤職員が存在していることから、経費削減が期待できないことも理由の一つと考えられます。
「小さな政府」は、格差社会を拡大させるばかりか、本来セーフティーネットとなるべき公共サービスを崩壊させようとしています。私たちは、「小さな政府」に替わる新たなシステムを構築していかなければなりません。
自治労は、質の高い公共サービスを問い、市民や地域社会とともに自治体の公共サービス提供責任、サービスの質と水準を担保する業務、財政、人的基盤整備のあり方について、自治分権の立場から具体的に問題提起する自治体改革運動に取り組んでいます。地方自治体が提供責任を持つ福祉・医療・介護・保育などの不可欠サービス分野に民営化推進など規制緩和や運営形態変更圧力が高まっていることから、「福祉人材確保」や「地域医療確保」など地域公共サービスを守るキャンペーンを展開しています。技能労務職問題に関しては、公共サービスの担い手の多様化を踏まえたうえで、市民ニーズに対応する主体的な「現業職場活性化」を進め、「職の確立」をはかり、災害時や緊急時の対応、地域に不可欠なライフライン―医療・介護・保育、水・廃棄物処理などの確保、サービス水準の評価指標モデルの策定、そして基本的な技術・ノウハウ継承と人材の確保や、こられの業務のコーディネートを担う直営部門を確保する取り組みも行っています。
連合も、「格差が拡大し、二極化が進んでいる社会であるからこそ、適切な公共サービスが公正かつ効果的に提供される仕組みが必要」であり、「現在の『官』や『行政サービス』の問題点を克服しながら、市民が協働する『新しい公共』を創造すべき。『新しい公共』においては、多様な提供主体のベストミックスによって、ニーズに応じた豊かなサービスが提供される一方で、政府・自治体が果たすべき役割を明確にすることが必要」との見解を示しています。こうした観点から、変化する公共に対応し、公共サービスが本来もつべきセーフティーネットを確保、公共サービスが国民に対して適正かつ確実に実施されるため、連合、民主党が中心となって「公共サービス基本法」制定の動きも具体的になってきています。
こうした動きの中で、私たちに何が求められ、私たちは何をめざしていくのか。それを知るためには、私たちがなぜ存在しているかを問わなければなりません。私たちの仕事はどういう必要性に基づいているのか。「質の高い公共サービス」を提供するために、私たちは何をなすべきなのか。それを問うことです。そして、私たちの存在理由は、私たちが働く自治体の住民の中にあることを認識しなければなりません。
自治体の運営、とりわけ財政運営について、もはや管理運営事項だと目を背けているわけにはいきません。自治体財政の行き詰まりが私たちの給与など勤務条件に密接な関係を持っているのは、夕張や先日自治研交流で訪問した長野県王滝村の状況、あるいは多くの自治体で行われている給与カットを見れば明らかです。
自治研運動は1957年、全国的な地方財政危機を迎え、各自治体では行政施策に影響が出始める中、「私たち地方公務員は、本当に住民のために役立っているか、必要とされているか」が市民から問われたことを契機に始まりました。「ごみの分別収集」は、現場で働く清掃労働者からの問題提起を受け、市民を巻き込んだ議論の中から「分別」という概念が生まれ、全国に広まり定着していきました。また、高度経済成長時代の産業最優先主義を糾弾する「四日市公害問題」や、いま多くの自治体で実施している「急病人に対する夜間・休日の救急医療体制」も、自治研活動の中から生まれました。
いま、私たちは50年前と同じ課題を突きつけられています。この課題に対しては、住民に最も近い場所で仕事をする私たちこそが、どこに問題があり、どうすればそれが解決できるのかを提起できるのだと考えます。